テレビを見るより読書の方が幸福感が高まる?

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本を読んだり音楽を聞くといった古くから行われてきた余暇時間の過ごし方は、近年になって行われるようになった、例えばテレビゲームを楽しむといった行為よりも、人々の幸福感を高めるのではないかと感じている人は少なくない。しかし、「実際はそうでないようだ」とする研究結果が「Scientific Reports」に1月6日掲載された。

この論文の筆頭著者である英オックスフォード大学のNiklas Johannes氏によると、「本や音楽などの伝統的なメディアは良いものだとわれわれは信じているが、驚くべきことに、それが事実であることを示すエビデンスは存在しない」とのことだ。そして同氏は、「古典的なメディアは有益で新しいメディアは有害であるという考え方は、かなりエリート主義的な価値観に基づくものではないか」と述べている。

Johannes氏らは、新型コロナウイルス感染症パンデミックのため、英国でロックダウンが実施された2020年4~5月に、16歳以上の2,159人を対象として、メディア利用状況の調査を実施。同時に回答者のメンタルヘルス状態を評価し、それらの関係を解析した。研究参加者は過去6週間にわたって、前の週のメディアの利用時間を毎週報告するとともに、回答前日の不安と幸福感のレベルを報告した。評価したメディアは、音楽、テレビ、映画、テレビゲーム、本、雑誌、オーディオブックという7種類。

統計解析の結果、音楽、テレビ、映画、テレビゲームを利用した人は、それらを利用しなかった人よりも、メンタルヘルスが不調の傾向が見られた。また、オーディオブックの利用者は非利用者より、幸福レベルが低いものの不安のレベルは低くないことなども分かった。ただし、それらは極めてわずかな違いであり、Johannes氏によると「人々が違いに気付くほどのものではない」とのことだ。結論として同氏らは、「人々が利用するメディアのタイプやその利用時間は、幸福感にほぼ全く影響を与えないのではないか」とまとめている。

Johannes氏はまた、「人々のメンタルヘルスが社会問題になっている状況では、得てしてメディアの影響を指摘する声が高まる。しかし、メディアがメンタルヘルスに与える影響は大きなものではない」と述べている。ただし同氏は今回の研究の限界点として、ソーシャルメディアの影響を調査していないこと、利用されたメディアのコンテンツの中身まで掘り下げた解析をしていないことを挙げている。加えて、本研究からは因果関係については言及できないことを強調。メディアの利用がメンタルヘルスに影響を及ぼすのではなく、メンタルヘルス不調の人が何らかのメディアを利用した結果を表している可能性もあるとしている。

米ジョージ・メイソン大学の名誉教授で心理学専門のJames Maddux氏は、自分自身が「読書はテレビやゲームより良い時間の使い方だと長年信じていた“エリート主義者”の一人だ」と述べた上で、「今回の研究報告にやや驚いた」と語っている。ただし、「本研究は新しいテクノロジーが伝統的なメディアの利用形態を変えつつある実態を考慮していない」と、結果解釈上の注意点を指摘している。同氏自身は「文字を読むとき、その9割はパソコンのディスプレーで読む」とのことだ。

Maddux氏によると、この領域における研究の次のステップは、利用されたコンテンツの中身との関連を検討することだという。「既報研究からは、文芸小説を読むと共感力が高まることが示されている。人々がどのような映画を見た時に、メンタルヘルスへの影響が生じるのかという視点での研究も重要ではないか」と同氏は語っている。(HealthDay News 2022年1月7日)

https://consumer.healthday.com/1-10-will-books-tv-...

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