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手術中の吐き気止め投与でがん患者の死亡率が低下

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乳がんや膵臓がんなどの特定のがん種の手術を行う際に、患者に吐き気止めのデキサメタゾンを投与すると、術後90日間での死亡率が低下する可能性のあることが、予備的研究で明らかになった。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターおよびハーバード大学医学大学院のMaximilian Schaefer氏らによるこの研究結果は、米国麻酔科学会議(ASA 2021、10月8〜12日、米サンディエゴ)で報告された。

デキサメタゾンはステロイド系の抗炎症薬で、手術後や、催吐性の強い抗がん剤での治療中に、悪心・嘔吐の予防薬として使われる。2018年の膵臓がん患者を対象にした研究では、膵頭十二指腸切除術中にデキサメタゾンの投与を受けた患者で、術後の生存率が有意に改善したことが報告されている。Schaefer氏らによると、デキサメタゾンは、理論的には生存にプラスにもマイナスにも働く可能性があるという。同薬剤は、腫瘍の成長を阻害することが示されている一方で、免疫系を抑制することも知られているからだ。

Schaefer氏らは今回、2005〜2020年の間に米国内の2カ所の病院で固形がんに対する手術を受けた患者7万4,058人を対象に、手術中のデキサメタゾン投与と術後90日以内の死亡との関連を調べた。

対象者の34.0%(2万5,178人)が手術中にデキサメタゾンの投与を受けていた。術後90日以内に死亡したのは、デキサメタゾン投与群で0.83%(209人)だったが、非投与群では3.2%(1,543人)に上った。対象者の年齢や性別、手術前のステロイド薬の投与や抗がん剤治療の有無、手術時間などのさまざまな因子を考慮した後でも、手術中のデキサメタゾン投与は術後90日間での死亡率低下と関連することが明らかになった(調整オッズ比0.68、95%信頼区間0.57〜0.81、P<0.001)。

さらに、がん種別に解析を行ったところ、手術中のデキサメタゾン投与の効果が特に大きいのは、乳がん(同0.22、0.11〜0.45、P<0.001)と婦人科悪性腫瘍(卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がん)(同0.33、0.16〜0.66、P=0.002)であることも判明した。これらのがんは、体内で強い免疫応答を引き起こさず、そのため、がん細胞の増殖の制御に免疫系が主要な役割を果たさないタイプのものであるという。

Schaefer氏は、「この結果は、肉腫や、乳房、子宮、卵巣、食道、膵臓、甲状腺、骨、関節の腫瘍のような免疫系の働きに応答しにくいがんでは、手術中のデキサメタゾン投与により短期的な生存期間を改善できる可能性を示唆するものだ」と述べている。そして、「ただし、それを証明するためには、これらのがん種の患者を、デキサメタゾン投与群と非投与群にランダムに割り付けて、その有効性を検証するランダム化比較試験の実施が必要だ。今回の研究で得られた知見は、そのような臨床試験の基礎となるのではないか」と付け加えている。

米MDアンダーソンがんセンターのJuan Cata氏は、「素晴らしい研究結果ではある。それでも、この研究は観察研究であり、確認されたベネフィットがデキサメタゾン投与によるものであるのかどうかは明確になっていない」と話す。また、デキサメタゾンを投与された患者では、手術の平均時間が非投与群よりも大幅に長かった理由が不明であることや、術後90日以内の死亡は、がんではなく術後の合併症が原因である場合が多いことを指摘している。

Schaefer氏は、今回の研究結果が因果関係を示すものではないことを認めつつも、「医療現場に影響を与え得る結果であり、麻酔科医は、免疫系の働きに応答しないがん種の手術で、患者にこれまでよりも自信を持ってデキサメタゾンを投与できるようになるのではないか」との見方を示している。

なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2021年10月12日)

https://consumer.healthday.com/10-11-anti-nausea-d...

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