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コロナ関連のメディア出演で医師らが脅迫や中傷の標的に

Adalja
Dr. Amesh Adalja

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の話題でメディアにたびたび登場する専門家は、殺害や暴力の脅し、誹謗中傷などの標的になりやすいことが、メディアの取材に協力したことのある医師などの専門家を対象とした調査から明らかになった。調査結果は、「Nature」10月14日号に掲載された。

「Nature」誌は、医師たちに対するハラスメントの事例が注目されるようになったのを受け、英国、カナダ、台湾、ニュージーランド、ドイツ、米国、ブラジルの専門家に対して調査への協力を依頼し、321人から回答を得た。

その調査結果によると、10人中8人以上が、「COVID-19についてジャーナリストと話をする機会を持ったことは良い経験だった」と回答していた。ところが、実際にインタビューの記事が掲載されたり、放送されたりした後に、個人攻撃や身体的・性的暴力の脅しなどのネガティブな影響があったことを報告した専門家の割合は3分の2を超えていた。例えば、回答者の15%には殺害をほのめかす脅迫文が、22%には身体的または性的な暴力に関する脅迫文が送られてきた経験があった。また、59%の回答者には、信用を傷つけられた経験があった。さらに、30%がメディアで語った内容に対する人々の反応によって自身の評判を損なうことになったと回答したほか、心理的苦痛をもたらされたと回答した専門家の割合も42%に上っていた。このほか、COVID-19についてメディアで発言すると、「必ず」あるいは「たいていの場合」、こうした攻撃にあうと回答した専門家の割合も4分の1に達していた。

たびたびメディアに登場する感染症の専門家で、米ジョンズ・ホプキンス大学ヘルス・セキュリティー・センターのAmesh Adalja氏のところにも、メールやあらゆるソーシャルメディアを介して、毎日のように脅迫や中傷のメッセージが送られてくるという。同氏は、「人々は、主に自分が属している集団の物の見方を通して今回のパンデミックを捉えている。そのため、その集団の意に沿わないことをする人は攻撃の対象にされてしまう。このことは、科学的な知識が軽視され、理性の尊重が欠如した現代社会を浮き彫りにしている」と話す。

ただし、医師や科学者に対して悪質なコメントや脅迫文が送られるような事例は、今回のCOVID-19のパンデミックで初めて起こったわけではない。「2014年にエボラ出血熱の流行が起きたときにも、私は"オバマ派のイスラム教徒"と呼ばれていた。もっとも私は、オバマ氏には投票していない上に、無神論者なのだが」とAdalja氏は当時のことを振り返る。同氏はまた、街灯から吊り下げてやると脅されたり、何度も罵られたり、同じ浅黒い肌をした人たちのいる故郷へ帰れと言われたりなどもしたという。

一方、英レディング大学細胞微生物学准教授のSimon Clarke氏は、「科学者たちがこうしたネガティブな経験をするようになったのは、社会での議論が停滞していることの表れだ。さらに、ソーシャルメディアの普及や、社会的あるいは政治的な同族意識が強まりつつあることが、この問題に拍車をかけたのではないか」と「Nature」誌に語っている。

その上でClarke氏は、「このことは社会全体にとって問題だ。しかも、今回の調査から、科学者たちにはその影響から身を守るための免疫が全く備わっていないことも明らかになった。暴力的な脅迫に対する恐怖が原因で、人々が科学について議論できなくなってしまうことは、社会に大きなリスクをもたらす」と指摘。「科学者に個人的な反響が及ぶことを恐れ、閉じられた空間だけで科学的事実が議論されるようになることは、後退の道を歩むことを意味し、危険だ。そうなってしまうと、科学者への不信感がさらに募り、端的に言えば、科学の退行につながる」と述べている。(HealthDay News 2021年10月14日)


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