肥満に伴う深刻な肝疾患が増加している

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ひと昔前、肝臓の病気と言えば、ウイルス感染による肝炎やアルコールの飲み過ぎによる肝炎が注目されていた。しかし今、肥満や糖尿病などで多く見られる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が深刻な脅威になっている。「The New England Journal of Medicine」に10月21日に論文が掲載された研究から、NAFLDが肝硬変へと進行すると、死亡リスクが約7倍に上昇する可能性のあることも分かった。

「NAFLDはサイレントキラー(静かなる殺人者)だ。症状が現れた時には既に深刻な問題に直面している」。そう解説するのは、論文の著者の一人である米ジョンズ・ホプキンス大学のJeanne Clark氏だ。「NAFLDが進行して症状が現れるまでには数年から数十年かかることがある。そして肝臓の線維化が進み症状が現れ始めた人は、死亡リスクも上昇する」と同氏は述べる。Clark氏によると、NAFLDの肝臓はアヒルやガチョウのフォアグラのようなもので、炭水化物や吸収の速い精製穀物の取り過ぎが主な原因だという。

米国立衛生研究所(NIH)は、世界人口の約4人に1人にNAFLDの前段階である脂肪肝が見られるとしている。また今回の研究論文の付随論評では、このような脂肪肝が進行した結果として生ずる肝硬変患者や肝移植を要する患者が増加しており、C型肝炎による肝硬変や肝移植件数を追い抜いた現状に言及している。

米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のScott Friedman氏は、このような脂肪肝やNAFLDは、メタボリックシンドロームと関連した病態だと解説する。そして、「一般生活者はもちろん医師でさえ、肥満や2型糖尿病、メタボリックシンドロームの患者のNAFLDの重要性を正しく理解していないことがある。NAFLDは、いずれ致命的となる可能性を含みつつ、サイレントに進行する」と注意を喚起している。

Clark氏らの研究は、NAFLD患者1,773人を4年間(中央値)追跡して予後を検討したもの。その結果、全ての死因による死亡(全死亡)リスクが、ベースライン時の肝臓線維化の程度によって異なることが明らかになった。具体的には、ベースライン時の状態をF0~F4の5段階に分けると(数値が大きいほど重症)、F0~F2だった人の全死亡リスクは100人年当たり0.32であるのに対して、F3の人は同0.89で、肝硬変に相当するF4では1.76だった。また、病期の進行に伴い、肝細胞がん、静脈瘤からの出血、腹水、脳症(精神神経症状)が増加し、それらの症候のある人は全死亡リスクが7倍近く高いことも分かった〔調整ハザード比6.8(95%信頼区間2.2~21.3)〕。

この報告を基にFriedman氏は、「2型糖尿病や肥満、メタボリックシンドロームを有する患者と、医療従事者の双方が、肝臓の状態に関心を寄せる必要がある」と述べている。ただ、脂肪肝の人が全員、NAFLD、肝硬変へと進むわけではない。「肝臓の線維化が進行していく患者は、おそらく20~30%ではないか」と同氏は推測している。

脂肪肝にとどまる人と線維化が進む人に分かれる理由は現時点で不明だが、Clark氏とFriedman氏はともに「減量が最善の選択肢だ」と話す。NAFLDを適応症として承認されている医薬品はまだない。しかし、多くのメーカーが新薬の開発にしのぎを削っており、「開発段階にある候補物質は数十に上る」とFriedman氏は言う。

その中の一つの開発状況の報告が、Clark氏らの論文掲載と同じく、10月21日の「The New England Journal of Medicine」に掲載された。これは、アントワープ大学病院(ベルギー)のSven M. Francque氏らが行った、lanifibranorという薬剤の後期第II相臨床試験の結果だ。同薬を高用量投与した群で、肝線維化の抑制・改善が認められたことが報告されている。(HealthDay News 2021年10月22日)

https://consumer.healthday.com/10-22-deadly-liver-...

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