虚血性心疾患や脳卒中などの心血管疾患(CVD)は、世界の死因の3分の1を占める主要な死因であり、現在もCVDによる死亡者数は増え続けているとする報告が、米ワシントン大学循環器病学准教授のGregory Roth氏らにより、「Journal of the American College of Cardiology」12月号に掲載された。
この報告は、世界疾病負荷研究(The Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2019;GBD 2019)の推計データに基づき、総CVD負荷の大きさを検討したもの。GBDは7つの研究機関により1990年に開始された、健康に関する国際共同研究である。GBD 2019では、世界の204の国や地域における1990〜2019年の健康にまつわるさまざまな指標が数値化され、提示された。
報告によると、1990〜2019年の間に、世界でのCVDの症例は、2億7100万人から5億2300万人へとほぼ倍増した。また、CVDによる死亡者数も、1990年の1210万人から2019年の1860万人へと恒常的な増加を示した。2019年では、CVDによる死亡の大部分は、動脈の狭窄によって引き起こされる虚血性心疾患と脳卒中に起因しており、これらを原因とする死亡者数は1990年から増加の一途を辿っている。
さらに、障害調整生命年(Disability-Adjusted Life Year;DALY、病的状態や障害などにより失われた年数)と損失生存年数(Years of Life Lost;YLL、理想的な平均余命から疾病障害により失われた年数の合計)も有意な増加を示した。また、障害生存年数(Years Lived with Disability;YLD、理想的ではない健康状態で過ごす年数)は、1990年の1770万年から2019年には3440万年へと倍増を示した。
2019年のCVDによる死亡者数は、男性で960万人、女性で890万人であり、全世界の死亡者数の3分の1を占めていた。これらの死亡者のうち、600万人以上が30〜70歳の人であった。CVDによる死亡者数が最も多かった国は中国で、インド、ロシア、米国、インドネシアがそれに続いた。
国レベルで見ると、CVDによる死亡率が最も高かったのは、ウズベキスタン、ソロモン諸島、タジキスタンであった。これに対して、最も低かったのは、フランス、ペルー、日本で、2019年の死亡率は1990年の6分の1に低下していた。
Roth氏は、「人口の増加と高齢化により、今後もCVDの症例は、大幅に増加するものと思われる。特に、2019〜2050年の間に高齢者人口が倍増することが予想されている北アフリカ、西アジア、中央アジア、南アジア、東アジアと東南アジア、ラテンアメリカとカリブ海諸国で、この傾向は顕著だろう」と予測。その上で、生涯を通じて心臓の健康に気遣い、健康的に年齢を重ねていくことに、さらに注意を向けるよう呼び掛けている。
Roth氏はまた、「それとともに、今後は、CVDの予防と管理のための実現可能で手頃な戦略を実施し、その結果を観察していくことが、同じくらい重要になる」と述べている。(HealthDay News 2020年12月10日)
https://consumer.healthday.com/12-9-heart-disease-is-becoming-a-big-killer-worldwide-2649368037.html
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