フローテーションRESTは慢性疼痛の緩和に有効?

flotation tank

フローティング・タンクは慢性疼痛を緩和する手段には向かないようだ。ハノーバー医科大学(ドイツ)神経放射線学研究所のJorge Manuel氏らが、約100人の慢性疼痛患者を対象にフローテーション環境刺激制限療法(flotation restricted environmental stimulation therapy、以下、フローテーションREST)の疼痛軽減効果を検証する臨床試験を実施したところ、少なくともその長期的な効果に関しては期待外れの結果が示された。この臨床試験の結果は、「JAMA Network Open」に5月14日発表された。

フローテーションRESTとは、音や光が遮られたタンクの中で、皮膚温に温められた塩水に浮かぶというセラピーだ。もともとは、リラクゼーションやストレス軽減、睡眠の質の向上などを目的としたものだが、即時あるいは長期的な痛みの緩和効果も期待されていた。しかし、その効果が信頼性の高い方法で検証されたことはこれまでなかった。

そこで、フローテーションRESTの真の効果を検証するために、Manuel氏らは2018~2020年に、少なくとも6カ月以上にわたって慢性疼痛を抱えている成人99人(平均年齢51.7歳、女性81%)を対象とするランダム化比較試験を実施した。対象者は、3分の1がフローテーションRESTを行う群(フローテーションREST群)に、別の3分の1が浮力に乏しく音や光の遮断性も大幅に低い偽のフローテーションRESTを行う群(プラセボ群)に、残る3分の1は試験開始時に受けていた治療は継続するが追加の介入は行わない群(待機リスト対照群)にランダムに割り付けられた。フローテーションREST群およびプラセボ群は、1回60〜90分の治療を、4日の間隔をおいて5回行った。疼痛の程度は、最後のセッションから1週間後、3カ月後、6カ月後に評価した。

その結果、治療後に行ったいずれの時点での疼痛評価でも、フローテーションREST群とプラセボ群の間に有意差は認められないことが明らかになった。両群ともに、短期的には患者報告に基づく疼痛の強度や不安が有意に軽減し、痛みの範囲も減少していた。しかし、フローテーションRESTの長期的な疼痛緩和効果は確認されなかった。

Manuel氏は、「慢性疼痛に対し、フローテーションRESTによる長期的な効果は認められなかった。しかし、短期的には強力な改善効果が認められた。ただし、こうした効果はプラセボ群でも同様に認められた。これらのことから、感覚の遮断や力を抜いて水中に浮かぶことが改善効果をもたらすわけではない可能性が示唆された」と説明している。そして、改善効果をもたらした要因については、「対象者は、セラピーに対して大きな期待感を抱いていた。高い期待感は体内のオピオイドなどの疼痛緩和物質の産生を促すことから、このことが一因となっている可能性はある」との見方を示している。また、「一部の対象者には、その他の対象者よりも非常に強い効果が現れた。これは、フローテーションRESTが特定の個人に適している可能性があることを示唆している」とも述べている。

また、今回の臨床試験では、フローテーションRESTの慢性疼痛に対する短期的な効果は示されたことから、Manuel氏は、「このような受動的な介入に、心理療法のような、より積極的な介入を組み合わせることで長期的に効果を維持できる可能性がある」としている。(HealthDay News 2021年5月26日)

https://consumer.healthday.com/5-19-can-flotation-...

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