尿路感染症の再発は抗菌薬が原因?

UTI urinary
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尿路感染症はよく見られる感染症であり特に女性に多く、繰り返し発症する人もいる。抗菌薬によって比較的容易に治癒するが、その抗菌薬が再発を引き起こしやすくしているのではないかとする、米ワシントン大学のScott Hultgren氏らの論文が、「Nature Microbiology」に5月2日掲載された。

女性の最大80%が生涯に一度は尿路感染症(UTI)を発症し、治癒後の女性の約4分1が半年以内に再発すると言われる。UTIがなぜそれほど再発しやすいのかはよく分かっていないが、今回報告された研究から、治療のための抗菌薬が、体内の腸内細菌叢の有益な細菌、いわゆる“善玉菌”を減らしてしまうことが一因である可能性が示された。

腸内細菌叢とは腸管内に生息している細菌の集まりのことで、免疫応答を含む健康の維持に重要な機能を持つことが明らかになってきている。腸内細菌叢の組成は変化しやすく、食事や抗菌薬の影響を受けやすい。抗菌薬の服用後に下痢などの消化器症状が起こりやすいのは、主に腸内細菌叢の組成が変化するため。

一方、腸管は尿路感染症を引き起こす細菌(主として尿路病原性大腸菌)の“貯蔵庫”のような一面があり、Hultgren氏は「UTIは、腸管内のそれらの細菌が尿路へ上行性に感染することで発症することが多い」と解説する。同氏によると、腸内細菌叢の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れた時に、UTIの再発が増加する可能性があるという。ただしこれまで、そのような視点からの研究はなされていなかった。

Hultgren氏らの研究対象は、18~45歳の女性31人。そのうちの15人は過去1年間に3回以上UTIを発症し、その多くは抗菌薬で治療されていた。ベースライン時点で血液、尿の検体を採取し、かつ毎月、便検体を収集して1年間追跡。追跡期間中に尿路感染症が24件診断され、それらは全てUTI再発既往歴のある女性だった。

検討の結果、追跡期間中にUTIを発症した女性と発症しなかった女性との間に、腸内細菌叢の組成の差異が認められた。具体的には、UTIを発症した女性は善玉菌の多様性が少なく、炎症の抑制に役立つ脂肪酸である酪酸を産生する細菌も少なかった。UTIを発症しなかった女性も尿路病原性大腸菌を腸管内に有しており、時には膀胱への移動も認められた。それでも発症には至らなかった。この差は、腸内細菌叢の組成の違いによる免疫応答の差によるものと考えられるという。

論文の上席著者で、米国の研究機関Broad InstituteのAshlee Earl氏は、「1つの疑問は、最初のUTIがなぜ発症するのかという点だ。ほかの疾患の治療で抗菌薬を使用したことが原因なのか、それとも何らかの理由で腸内細菌叢の乱れのある女性がUTIを発症し、抗菌薬による治療を行ったことが再発リスクを高めるのか?」。同氏はその答を「まだ分からない」と述べている。

またEarl氏は、「今回の研究結果は、UTIが個人の衛生管理の問題だという従来の考え方に疑問を投げかけるものだ」と語る。同氏によると、これまでUTIの再発を繰り返す女性は不名誉な烙印を押されることがあったという。しかしUTI再発は衛生管理が良くないことが原因ではなく、「別のところにある可能性が示された」と同氏は指摘する。

本研究には関与していない米シーダーズ・サイナイ医療センターのKaryn Eilber氏は、「報告された研究結果は理にかなっており、米国ではUTI治療に抗菌薬が過剰に使用されているのではないかとの長年の懸念の裏付けとも言える」と述べている。Eilber氏は「UTIの治療に抗菌薬が必要なことは確かにあるが、医師に抗菌薬を処方されたら、それが本当に必要なのかを気軽に尋ねてみると良い」とアドバイスする。

一般的な鎮痛薬でUTIの腹部不快感をコントロールしたり、尿を酸性にする薬による治療法もある。また、閉経後に腟の粘膜が薄くなることが再発に関与している場合は、女性ホルモン(エストロゲン)により腟粘膜の状態を改善することが再発抑止に役立つことがある。さらにHultgren氏によると、腸内細菌叢全体には影響を与えず、尿路病原性大腸菌のみを排除する薬剤が現在開発段階にあるという。なお、食事内容の変更やプロバイオティクスのUTI再発予防効果については、現時点では「不明」とのことだ。(HealthDay News 2022年5月9日)

https://consumer.healthday.com/5-6-are-antibiotics-the-cause-not-solution-of-recurrent-utis-2657250535.html

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