小児の腎移植で免疫抑制薬の必要性をなくす方法を開発

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免疫抑制薬を使用しなくても安全に小児への腎移植を施行できる方法について、米スタンフォード大学のAlice Bertaina氏らが、「The New England Journal of Medicine」6月16日号で報告した。Bertaina氏らは、親から提供された腎臓に加え、免疫システムも移植するという新たなアプローチを開発。このアプローチにより移植手術を受けた3人の小児の腎臓は、免疫抑制薬を使用しなくても正常に機能し続けているという。

研究者たちはこれまで、移植患者が免疫抑制薬を生涯飲み続けなくても済むように、移植された臓器に対する“免疫寛容”を誘導する方法の開発に取り組んできた。その一つが、臓器ドナーの幹細胞を移植するというアプローチだ。

幹細胞は、自己複製能と分化能を持つ原始的な細胞であり、この細胞により作り出される成熟細胞の中には免疫システムの細胞も含まれる。したがって、臓器ドナーの幹細胞を移植することで、移植患者は、移植した臓器を認識し、臓器を傷付けることのない新たな免疫システムを得ることができると考えられる。

しかし、新たな免疫システムが移植患者の体を攻撃し、移植片対宿主病(GVHD)と呼ばれる致死率の高い反応が起こる危険性もある。そこで、Bertaina氏らは、GVHDのリスクを抑制するために、腎ドナーである親の造血幹細胞からGVHDの原因となるαβ T細胞とCD19陽性B細胞を除去してから移植を行う方法を試みた。

今回、腎移植を受けた3人の小児(4歳、6歳、8歳)には、まず、上述の方法で処理した親の造血幹細胞が移植され、その5~10カ月後に腎移植が行われた。1人が軽度のGVHDを発症したが、薬物治療で抑えることができた。移植から22~34カ月間が経過した現時点で、3人の腎臓は、免疫抑制薬を使用することなく良好に機能しているという。

ただ、3人の小児はいずれも腎臓病のほか、低身長、免疫不全などが起こるシムケ免疫性骨形成不全(SIOD)と呼ばれる、まれな遺伝性疾患の患者であった。Bertaina氏は、SIODに伴う免疫不全が今回のアプローチを成功に導いた一因なのかもしれないとの見方を示し、「正常な免疫機能が保たれた腎臓病の小児患者にもこの方法が有効であるかどうかについては不明である」と強調している。

米チルドレンズ・マーシー・カンザスシティの小児腎臓病の専門医であるBradley Warady氏も、「今回の移植患者にとっては素晴らしい結果だが、腎移植を必要とする全ての小児にこの結果を当てはめることはできない」と指摘。ただ、このような慎重な姿勢を示しつつも、「この方法が普及することに控えめな期待は持てる」と話している。

Bertaina氏は、「この成果によって移植医療における究極の理想は実現可能であることが示された」と話す。生涯にわたって免疫を抑制すると、重い感染症やがん、糖尿病、高血圧のリスクが高まるなど、さまざまな影響がある。そのため、Warady氏とBertaina氏はいずれも、「腎移植を受けた人たちを免疫抑制薬から解放することができれば、それは大きな進歩といえる」との見解を示している。

さらに、米コロラド小児病院の小児腎臓病専門医のEliza Blanchette氏は、「免疫抑制薬は、移植した腎臓に徐々にダメージを与えることがあるため、その使用を回避することで腎臓が機能する期間が延長する可能性がある」と、免疫抑制薬の必要性をなくすことで得られる別のメリットについて言及している。(HealthDay News 2022年6月16日)

https://consumer.healthday.com/6-16-2657500666.html

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