低用量アスピリンは糖尿病患者の認知症リスクを変えない

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低用量のアスピリンは、成人2型糖尿病患者の認知症リスクを、低下もさせなければ上昇もさせないというデータが、米国心臓協会学術集会(AHA Scientific Sessions 2021、11月13~15日、オンライン開催)で発表された。報告者の1人である英オックスフォード大学のJane Armitage氏は、「この結果は、心臓発作や脳卒中のリスク抑制のために低用量アスピリンを毎日服用している、世界中の何百万人もの患者を安心させるものだ」と述べている。

糖尿病患者は血栓による心血管イベントのリスクが高いため、抗血小板薬である低用量のアスピリンが処方されることが多い。また糖尿病患者は認知症のリスクが高いことも分かっており、現在そのリスク因子の探索が続けられている。糖尿病患者に頻用されるアスピリンは、血栓形成を防ぐ一方で出血リスクを高めるという副作用がある。しかし、その出血リスクが認知症リスクにつながるのかは明らかになっていない。

Armitage氏らは、英国で行われている糖尿病患者の心血管イベントに関する研究「ASCEND」のデータを用いて、低用量アスピリン処方による認知症リスクへの影響を検討した。ASCEND試験には、研究登録時点で脳卒中や心臓発作、またはその他の循環器系疾患、および認知症の既往のない2型糖尿病患者が1万5,000人以上含まれており、その半数にアスピリン100mg/日、他の半数にプラセボが処方された。

約7年間の介入に引き続き2年間追跡を行い、計約9年間追跡。その間、1,146人に認知症や認知機能の低下を表す所見、せん妄などが認められ、認知症治療薬の処方が開始されるか専門医療機関へ紹介されていた。低用量アスピリン群でのその割合はプラセボ群に対し、評価項目により-19~2%の範囲にあり、全体では-9%だった。ただし、統計的に有意でなかった。

その一方で、認知症のリスクは心血管イベントや大出血イベントと関連のあることが分かった。例えば、追跡期間中に心血管イベントが起きた生存者990人は、心血管イベントが起きなかった患者よりも、認知症や認知機能の低下を表す所見を認める確率が約2.5倍高かった。また、大出血イベントが起きた生存者496人は大出血イベントが起きなかった患者よりも、そのリスクが約2倍高かった。

この結果をArmitage氏は、「アスピリンの認知症や認知機能低下リスク抑制効果について、明確な結論は得られなかった。アスピリンは、血栓による脳卒中を防ぐことで認知症を予防する可能性がある。反対に、脳の出血のリスクを高める可能性がある」とまとめている。ただし、認知症や認知機能低下を認めた症例が少ないために群間差が非有意となった可能性があるとして、「認知症症例がより増えた場合に有意差が生じるのかを確認するため、さらに数年間、追跡を継続する予定」と述べている。

なお、学会発表された研究結果は一般に、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2021年11月19日)

https://consumer.healthday.com/b-11-16-low-dose-as...

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