出血リスクの低い抗凝固薬、臨床試験で有望な結果

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抗凝固薬には血栓を予防する一方で過度の出血を招くリスクがあり、長年の間、医師たちの頭を悩ませてきた。そんな中、この問題を解決に導くような、新たな抗凝固薬の開発に希望の光が見えたことを報告する第2相臨床試験の結果が発表された。血栓リスクの高い膝関節置換術を受けた患者に対して、術後にmilvexian(ミルベクシアン)と呼ばれる抗凝固薬を投与したところ、過度の出血リスクを増加させることなく血栓を予防できたという。マクマスター大学(カナダ)医学部・生化学・生物医学のJeffrey Weitz氏らによるこの研究結果は、「The New England Journal of Medicine」に11月15日掲載され、また、米国心臓協会年次総会(AHA 2021、11月13〜15日、オンライン開催)でも結果の概要が報告された。

ミルベクシアンは、血液凝固カスケードに関わる酵素の1つである第XIa因子に対する阻害薬である。Weitz氏らは今回、18カ国1,242人以上の人工膝関節置換術患者を対象に、術後のミルベクシアン投与、または既存の抗凝固薬であるエノキサパリン(商品名Lovenox)投与による血栓予防効果を比較した。ミルベクシアンは7種類の投与レジメン(25、50、100、200mgを1日2回、または25、50、200mgを1日1回)のいずれかに従って投与し、エノキサパリンは40mgを1日1回投与した。なお、Weitz氏らは、膝関節置換術患者を対象に選んだ理由として、これらの患者では術後の血栓リスクが高いことと、X線検査により脚の静脈の血栓を容易に検出できることを挙げている。

術後に血栓が生じた患者の割合は、ミルベクシアンの1日2回投与では、投与量が25mgで21%、50mgで11%、100mgで9%、200mgで8%、1日1回投与では、投与量が25mgで25%、50mgで24%、200mgで7%であった。一方、エノキサパリン投与群では21%であった。ミルベクシアンを投与された群では、投与回数に関わりなく、血栓リスクが用量依存的に有意に減少していた(P<0.001)。一方、出血は、ミルベクシアン投与群とエノキサパリン投与群の双方で、4%の患者に生じた。このうち、大出血、または大出血ではないが臨床的に問題となる出血が生じた患者の割合は、前者で1%、後者で2%だった。

こうした結果を受けてWeitz氏は、「出血は、現在の経口抗凝固薬の主な副作用だ。出血に対する恐れから、服用すべき抗凝固薬を控える患者もいる。このことから、より安全な抗凝固薬が必要とされていた。今回の試験から、ミルベクシアンがその候補薬として浮上した」と話す。

今回の研究には関与していない、米スタテンアイランド大学病院心臓病学部長のMitchell Weinberg氏は、「何十年もの間、血栓予防にはワルファリンが用いられてきたが、近年では、ワルファリンの代わりにリバーロキサバンやアピキサバンなどの新しい薬が使われるケースが多い。これらの薬は血栓予防に有効ではあるが、出血リスクもワルファリンより高くなる」と説明する。そして、「ミルベクシアンが臨床現場に導入されるためには、より大規模の臨床試験でその有効性と安全性を検証する必要がある。とはいえ、同薬、もしくは類似の抗凝固薬の開発により、出血リスクを増加させることなく血栓リスクを低下させられるのであれば、血栓を有する患者に対する医師の治療選択肢が劇的に改善される可能性がある」との見方を示す。

一方、米ロングアイランド・ジューイッシュ・フォレストヒルズの心臓病学部長であるMichael Goyfman氏は、「今回の研究結果が第3相臨床試験でも再現されるのであれば、実に素晴らしいことだ。個人的には、この研究結果を基に、今後、血栓予防の新たな手段が増えることに関して、注意深さを保ちつつも楽観視もしている」と大きな期待を寄せている。

なお、Weitz氏によると、新たな抗凝固薬の候補である第XIa因子阻害薬にはミルベクシアン以外にもいくつかあり、それらの試験結果については来年発表される可能性が高いという。(HealthDay News 2021年11月16日)

https://consumer.healthday.com/b-11-16-new-drug-co...

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