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白内障手術で網膜色素変性症患者のQOLが有意に改善――千葉大

白内障手術で網膜色素変性症患者のQOLが有意に改善――千葉大
Adobe Stock

網膜色素変性症患者に対する白内障手術によって、視力や視覚関連の生活の質(QOL)が有意に改善することが明らかになった。また、術前の中心窩エリプソイドゾーン(EZ)長が、術後の視覚関連QOL改善の予測に有用であることが分かった。千葉大学大学院医学研究院眼科学の三浦玄氏らの研究によるもので、詳細は「BioMed Research International」に9月13日掲載された。

網膜色素変性症(RP)は遺伝性の網膜疾患で、発症した場合は徐々に視機能が低下していき、長い年月の経過を経て失明に至ることもある。治療法が確立されていない指定難病の一つ。一方の白内障は眼内のレンズである水晶体が濁る疾患で、大半が加齢によるものであり高齢者にはごく一般的に見られる。水晶体を眼内レンズに置き換える手術により良好な視機能を取り戻せる。

RP患者は一般人口よりも若年で白内障を発症する傾向のあることが指摘されている。RP患者の視機能低下に白内障も関与している場合、手術によって視機能の部分的な回復を期待できる。ただしこれまでのところ、白内障手術がRP患者の視覚関連QOLをどの程度改善するかは不明であり、また白内障手術後のQOLに関連する因子は分かっていなかった。

三浦氏らはこれらの点を明らかにするため、千葉大学病院で2009年1月~2018年1月に白内障手術を施行したRP患者54人、80眼を対象とした前向き研究を行った。術前と術後3カ月に、矯正視力と視覚関連QOLを評価。また術前には、病状評価の指標である中心窩EZ長や中心窩網膜厚(CFT)を測定した。なお、視覚関連QOLの評価には、国際的に頻用されているNEI VFQ-25というスコアを用いた。

対象者の白内障の状態は、Emery-Littleという6段階の分類でグレード2~3であり、全例で超音波水晶体乳化吸引術および眼内レンズの移植が行われた。術前のEZ長は平均2,721.5±23.6μm、CFTは平均213.7±69.6μmだった。術後3カ月時点までに、後発白内障(白内障手術後に生じることのある後嚢の混濁)が認められた患者はいなかった。

術前と術後3カ月の評価を比較すると、矯正視力、およびNEI VFQ-25スコアの下位尺度のうち色覚を除く全てのスコア(全体的見え方、近見視力、遠見視力、社会的機能、メンタルヘルス、役割制限、見え方による自立、周辺視野)が有意に改善していた。最も大きく改善していたのは全体的見え方(general vision)で、術前の100点中44.44±18.1点から術後には64.40±20.4点に上昇していた(P<0.0001)。

次に、術前のEZ長やCFTと術後のNEI VFQ-25スコアの関連を検討すると、術前のCFTと術後の色覚スコアとの関連が非有意であることを除いて、術後NEI VFQ-25の全ての下位尺度が術前のEZ長やCFTと有意に相関していた。

続いて術後のNEI VFQ-25スコアの改善度を目的変数、術前のNEI VFQ-25スコア、矯正視力、EZ長、CFTを説明変数とする統計解析を実施。その結果、術前のNEI VFQ-25スコアは、術後のNEI VFQ-25下位尺度のうち、社会的機能とメンタルヘルスを除く全てのスコアの改善度と有意な負の相関が認められた。また術前のEZ長は、全体的見え方、遠見視力、メンタルヘルス、見え方による自立などの改善度と有意に正相関していた。一方、術前の矯正視力やCFTは、術後NEI VFQ-25スコアの改善度と有意な相関が認められなかった。

これらの結果を基に著者らは、「網膜色素変性症患者においては、術前の視覚関連QOLスコアが低くても、白内障手術によってQOLの改善が期待できる。また術前のEZ長は、手術によるQOL改善を予測する重要な因子と考えられる」と結論付けている。(HealthDay News 2021年10月18日)

Abstract/Full Text

https://www.hindawi.com/journals/bmri/2021/3846867/

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