ICU治療を受けた患者の4人に1人が失業――国内多施設共同研究

ICU治療を受けた患者の4人に1人が失業――国内多施設共同研究
Adobe Stock

集中治療室(ICU)での治療を受けた患者は、退院後に職を失いやすいことを示すデータが報告された。治療を受ける前に職に就いていて、退院後に自宅生活へ復帰できた人の24.1%が、1年後に失業状態にあるという。失業リスクに関連する因子も明らかになった。札幌市立大学看護学部成人看護学の卯野木健氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に3月18日掲載された。

ICUで治療を受けた患者は、職場復帰が困難である実態が既に報告されている。その理由として、退院後も身体的な機能障害やメンタルヘルス不調が継続・発症しやすいこと、離職期間が長期に及ぶケースが多いことなどが指摘されている。ただし、国内では十分な調査がまだ行われておらず、ICU入室に伴う失業の実態やそれに関連する因子が明らかになっていない。卯野木氏らは、多施設共同研究「SMAP-HoPe研究」のサブ解析により、この点の詳細な検討を行った。

SMAP-HoPe研究は、集中治療後症候群(ICU退室後に身体・認知機能、メンタルヘルスへ影響が生じている状態)の実態把握のため、国内12のICU施設が参加して実施された研究。2019年10月~2020年7月に3泊以上ICUに滞在し、ICU退室から1年後に自宅で生活しており、入院前には職を有していた18歳以上の成人328人を解析対象とした。

解析対象者の平均年齢は中央値64歳(四分位範囲52~72)、男性86%であり、55.5%はICU緊急入室患者で占め、重症度スコアのAPACHE IIは中央値14点(同10~19)。入院前の就業状況は、フルタイムが47.6%、パートタイム21.6%、自営業30.8%だった。ICU退室1年後の追跡調査では、就労状況のほかに、主観的認知機能(集中力と記憶力に関する質問へのリッカートスコアで評価)、家計の状況(入院前に比較し「良い」「悪い」「変化なし」の三択)、うつレベル(HADSスコア)、身体機能(EQ-5D-5Lスコア)を評価した。

ICU退室の1年後、24.1%が失業していた。失業者は有職者に比べて高齢で(年齢中央値が69対62歳、P<0.01)、ICU入室中の重症度が高かった(APACHE IIスコアが16対13、P<0.001)。一方、ICU入室の理由には有意な群間差がなかった(P=0.183)。

入院前のフルタイム勤務者で1年後に失業していたのは19.9%であるのに対して、入院前のパートタイム勤務者は46.5%が失業していた。家計の状況については、1年後の有職者では81.9%が入院前から不変であり、18.0%が悪化、失業者では48.1%が不変で51.9%が悪化と回答した。入院前より好転したとの回答は両群ともに0%だった。

多変量解析から、ICU退室1年後に失業状態にあることに、高齢、入院前の就労形態、うつレベルの高さという3つの因子が独立して関連していることが明らかになった。オッズ比(OR)は以下のとおり。1歳高齢であるごとにOR1.06(95%信頼区間1.03~1.08)、入院前のフルタイム勤務者に対してパートタイムはOR2.28(同1.16~4.48)、自営業はOR0.27(同0.12~0.60)、HADSスコア11以上でOR1.13(同1.05~1.23)。性別や認知機能、身体機能は有意な関連がなかった。

なお、感度分析のため、新型コロナパンデミックの影響を考慮してICU入室期間がパンデミック前であった患者に限定した解析と、定年の影響を考慮して60歳以下の人を除外した解析を実施。その結果、年齢に関しては有意性が消失したが、うつレベルの高さは引き続き、失業状態にあることと独立して有意に関連していた。

以上より著者らは、「ICU入室前に職を有していた患者の24.1%が、ICU退室から1年後に失業しており、うつ状態は失業と有意に関連していた。ICUから生存退室した患者については、その後の雇用状況とメンタルヘルスのフォローアップと適切なサポートが必要と考えられる」と結論付けている。(HealthDay News 2022年5月23日)

Abstract/Full Text

Consumer Japanese