世界初、遺伝子操作したブタの心臓のヒトへの移植に成功

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David Bennett Jr., patient David Bennett, and his daughter Nicole McCray in 2014 (photo: D. Bennett Jr.)

米メリーランド大学医療センター(UMMC)は1月10日、遺伝子操作したブタの心臓を57歳の男性に移植したことを発表した。男性の容態は、移植から3日後も良好だという。今回の移植手術を担当した、UMMC心臓移植プログラムを指揮するBartley Griffith氏は、「この画期的な移植により、臓器不足の問題は解決に向けて前進するだろう」と話している。

米国では現在、約11万人以上が臓器移植の待機リストに登録されているが、毎年6,000人以上が移植を受ける前に死亡しており、臓器不足が大きな問題となっている。ヒト以外の動物の生きている組織や臓器などをヒトに移植する異種移植は、何千人もの人々の命を救う可能性を秘めているが、強い拒絶反応などのリスクを伴う。異種移植は1980年代に最初に実施されたが、生後ほどなくしてヒヒの心臓の移植を受けた乳児が移植後1カ月経たずして拒絶反応により死亡したことを受け、移植計画の大部分は放棄された。それでもブタの心臓弁は、長年にわたってヒトの心臓弁の代用として使用されている。

今回の異種移植を受けた、米メリーランド州在住のDavid Bennettさんは末期状態の心疾患のために移植を受ける数カ月前から入院し、人工心肺装置(ECMO)につながれた状態であった。心臓移植を受けなければ命を落とす可能性があるものの、状態が悪いため、通常のヒト由来の心臓移植には適さないと判断されていた。Bennettさんは手術を受ける前日に、「異種移植を受けるか死ぬかのどちらかだった。私は生きたかった。成功するかどうかは分からなかったが、私にとっては異種移植が生きるための最後の頼みの綱だった」と語ったという。

Bennettさんに対する異種移植は、2021年12月31日に米食品医薬品局(FDA)の緊急許可を得た。この許可は、試験的な医療品(今回の場合は遺伝子を組み換えたブタの心臓)が、深刻なまたは生命を脅かす病状に直面している患者が利用できる唯一の選択肢である場合に認められる。

Bennettさんに移植されたブタの心臓には、移植されたヒトの拒絶反応のリスクを高める3種類の遺伝子のノックアウトなど、10カ所で遺伝子操作がなされていた。

Griffith氏は、「われわれは、異種移植については慎重に事を進めているが、この世界初の手術により、今後、患者にとって重要かつこれまでにない選択肢がもたらされることについては楽観視している」と話している。

米国心臓協会(AHA)はこのニュースを受けて声明を発表し、「この医学的進歩は、医療従事者が抱える臓器不足の問題の解決に役立つ可能性がある。移植を受けられずに死亡する患者は毎年、数千人に上るのだから」と期待を示す。AHAによると、心臓移植の待機リストに載っている患者の約20%は、移植臓器を待っている間に死亡するか、疾患が進行して複雑な移植手術を受けられなくなるという。(HealthDay News 2022年1月11日)

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