バイアグラで心疾患男性の寿命が延びる?

バイアグラで心疾患男性の寿命が延びる?

勃起障害(ED)の治療薬であるバイアグラを使用している慢性冠症候群の男性では、全死亡リスクや心筋梗塞の発症リスクなどが低下する可能性のあることが、カロリンスカ研究所(スウェーデン)のMartin Holzmann氏らにより報告された。研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」3月30日号に掲載された。

健康な人におけるED発症は心血管疾患の初期兆候である可能性がある。治療としては通常、アルプロスタジルの注射、またはバイアグラやシアリスなどのPDE5阻害薬の服用により、局所の血流を増加させる方法が取られている。PDE5阻害薬は血圧を低下させる作用があるため、以前は心筋梗塞のリスクがある冠動脈疾患の患者への処方は推奨されていなかった。しかしHolzmann氏らは2017年に行った研究で、心筋梗塞の既往歴がある男性でもPDE5阻害薬に対して良好な忍容性(薬剤の副作用が投与された人にとってどれだけ耐えられるかを示すもの)を示すだけでなく、同薬剤が寿命を延長し、新たな心筋梗塞や心不全の発症も防ぐ可能性のあることを示していた。

今回、Holzmann氏らは、National Patient Registerから1997〜2013年の間に心筋梗塞を発症、および/または、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた慢性冠症候群患者を抽出。この中から、心筋梗塞の発症または治療後6カ月以上あけて、アルプロスタジルまたはPDE5阻害薬のいずれかを使用していた患者(PDE5阻害薬使用者1万6,548人、アルプロスタジル使用者1,994人)を対象に、ED治療薬の使用が心臓の健康に及ぼす影響を比較した。

平均追跡期間5.8年の間にPDE5阻害薬群で2,261人(14%)、アルプロスタジル群で521人(26%)が死亡した。解析の結果、PDE5阻害薬群はアルプロスタジル群に比べて、全死亡リスクが12%低いことが明らかになった。同様に、PDE5阻害薬群はアルプロスタジル群に比べて、心筋梗塞の発症リスクが19%、心不全の発症リスクが25%、心血管疾患による死亡リスクが17%、血行再建術を受けるリスクが31%、それぞれ低かった。さらに、全死亡リスクとPDE5阻害薬使用の関連は用量依存的であり、使用頻度が高いほどリスクは有意に低下していた。

こうした結果についてHolzmann氏は、「この研究は因果関係を証明するものではない。PDE5阻害薬の使用者はアルプロスタジル使用者よりも健康状態が良く、そのためもともと死亡や心筋梗塞発症などのリスクが低かった可能性がある。PDE5阻害薬自体にリスクを低下させる作用があるのかどうかについては、ランダム化比較試験で検証しない限り、はっきりとしたことは言えない。今回の研究で得られた結果は、そうした臨床試験の実施を計画する根拠としては十分なものだ」と述べている。

この報告を受けて、米サンドラ・アトラス・バス心臓病院のGuy Mintz氏は、PDE5阻害薬には血管拡張作用の他に、抗炎症作用もある可能性を指摘する。しかし同時に、同薬はあくまでもED治療薬であり、全ての冠動脈疾患患者に対して使うことはできないことを強調している。

一方、米ロング・アイランド・ジューイッシュ・フォレスト・ヒルズのMichael Goyfman氏は、「PDE5阻害薬の使用者で確認されたより良い転帰は、それらの人の良好な健康状態(健康状態が不良な男性ばかりがアルプロスタジルを使用していた可能性がある)、あるいは高価なPDE5阻害薬を買う余裕がある収入の高さが関係している可能性もある」と解説。「非常に興味深い研究結果ではあるが、ランダム化比較試験により結果が確認されるまで、治療法に変更が加えられることはないだろう」と述べている。(HealthDay News 2021年3月23日)

https://consumer.healthday.com/sb-3-22-could-viagr...

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